Sharepointを使いはじめると用途としてよく用いられる「FAQ(よくある質問、Q&Aリスト)」、その作り方を記事投稿します。
社内ポータルサイトのコンテンツの一部、または独立したコンテンツとして作られることがあろうかと思います。単純に質問と回答さえ用意すれば、それなりの体裁にはなります。
いまだにエクセルで管理していると、デジタルネイティブな新入社員に白い目で見られそうです(ベテランが非効率なやり方を押し付けるという現象)
FAQサイトのイメージは人それぞれな感じもしそうなので、ここはOKWAVE(オーケーウェブ)さんのサイト構造を参考にしながら真似てみます。
テンプレートやアプリとか探さなくてもスクラッチでいけますよ。
OKWAVE(オーケーウェブ)のFAQ
お手本にするFAQはこちら。
本体となるユーザー参加型のOKWAVEを真似るのではなく、「OKWAVEの使い方」に関するFAQとなっています。シンプルでありがちなFAQの形態をしているのでお手本にさせてもらいました。
OKWAVEはコンタクトセンター業界の雄ですしね。
見えているインターフェースからの機能や仕様は次の通り。
- FAQは一つの記事で一つの質問と回答を含んでいる
- 記事はIDで管理、登録日時・更新日時もわかるようになっている
- カテゴリで記事を分類している
- 記事の中では、同一カテゴリが表示される仕組みになっている
- アンケートで記事の質を高める工夫がされている
- 最新のFAQがわかるようになっている
- 閲覧の多いFAQがわかるようになっている
- 解決できなかった場合にお問い合わせフォームが備わっている
Sharepointでどう作るか
OKWAVEに近しいインターフェースにしようとした場合、私が作るとしたら次の機能のいずれかを使うと思います。
- リスト:自由度・情報量が低い、Sharepointに不慣れな登録者でも投稿しやすい
- ページ:自由度・情報量が高い、Sharepointに不慣れな登録者では投稿しづらい
- リストとページの併用
- 上記の折衷案、FAQで最も見られている記事、問い合わせ窓口の負担が大幅に軽減できるものはSharepointに慣れた人がページで可読性の高い、丁寧な記事を作る
- 上記以外から外れるものは、リストを使って多くの人に登録してもらう
機能と実現可否
ページ、リストでの対応可否は次の通りとなります。
機能 | リスト | ページ | 併用型 |
---|---|---|---|
QAの記事管理 | ◯ | ◯ | |
記事のカテゴリ分類 | ◯ | ◯ | |
記事内での同一カテゴリの表示 | N/A | ◯ | △(ページのみ可) |
記事内でのアンケート表示 | N/A | ◯ | △(ページのみ可) |
記事一覧としての最新FAQの表示 | ◯ | ◯ | |
記事一覧としての閲覧が多いFAQの表示 | N/A | △ (ページのみアクセス取得可、 閲覧数で自動ソートは不可) |
|
問い合わせフォームの設置 (リンクではなくフォームの表示として) |
N/A | ◯ | △(ページのみ可) |
上記の通り、「閲覧が多いFAQの表示」はSharepointではちょっと厳しめです。
リストのアイテムはアクセス数が取得できません。
ページの場合はアクセス数は取れるものの、それを「閲覧数が多い記事一覧」としてアーカイブすることができません(ワードプレスでは当たり前の機能なんですけどね)。
Webパーツのニュース機能を使うことでアクセス数の表示まではできるのでアクセス数の多い記事はわかります。
Sharepointリストで作るFAQサイト
完成系
単一ページ内にFAQリストを盛り込む構成にします。
「機能と実現可否」で触れた通り、以下を盛り込んでいます。
- QAの記事管理
- 記事のカテゴリ分類
- 記事一覧としての最新FAQの表示
前提条件
- ページ、リスト設置・編集などの権限があること
- リスト操作については、最小限の説明とします
(より詳細に説明した記事を過去に投稿しています) - HTMLやJSONには触れないやさしい記事です
リストの概念が全くわからない人は先に読んでおくことをオススメします。
リスト設計とページ構成
リストは一つで管理します。複数カテゴリ表示に対応させるため、ビューを複数作成します。
リスト設定
列名称 | 種類(データ型) |
---|---|
ID | (リスト作成時にできるものを流用) |
Q. 質問 | 一行テキスト(既定のタイトル列を名称変更) |
A. 回答 | 複数行エディタ(画像、表、リンクを入れられるように拡張リッチテキストを使う) |
登録者 | (リスト作成時にできるものを流用) |
登録日時 | (リスト作成時にできるものを流用) |
分類 | 選択肢 |
ID、登録者、登録日時などはリストを作ると既定で作られます。差し支えなければ、これらを使うと良いでしょう。
ユニークなIDなんかは、任意文字列を含んだ形式を好まれる方もいるかもしれません。記事が長くなるので今回はやりませんが、思いつくところでは以下のような手段をとります。
- 「ID + 集計値列」で任意の文字列を生成する
- Power Automateで生成する
いずれの手段でも一旦アイテムを登録した後に、ユニークなIDが生成されます。
ビュー設定
リストは一つですが、ビューはたくさん用意します。カテゴリ名は組織で必要なものに読み替えてください。
No. | ビュー名称 | 説明 |
---|---|---|
1 | カテゴリA | カテゴリ分類用、質問のみで5つ表示する |
2 | カテゴリB | 同上 |
3 | カテゴリC | 同上 |
4 | カテゴリD | 同上 |
5 | 最新のFAQ | 最新FAQのみを5つ表示する |
6 | すべてのアイテム | リストを作ると既定で作られるリストで主に登録用 |
使うページ
ページは、FAQを登録する人用のページ、FAQを見るだけの人用のページを準備します。
- リスト管理ページ
- リストを作った時にできあがる一覧画面をFAQを登録する人用のページとして扱います。
- サイトのページ
- リストをWebパーツとして挿入するためのページです。
- FAQを閲覧する人用の画面として使います。
それでは実際に作ってみる
- 手順1リストを作る
- 手順2リストにアイテム(FAQ)を登録していく
- 手順3ビューを作る
- 手順4閲覧者用ページにリストをWebパーツとして埋め込む
- 手順5サイト内に閲覧者・投稿者それぞれのページへの動線を確保する
手順1 リストを作る
FAQを管理するためのリストを一つ作ります。
リストの作り方は以前、詳細に記事にしています。ここではポイントのみ触れていきます。
▲ ホーム画面の「+新規』からリストを選び、「空白のリスト」で編集を開始します。
▲ 「名前」「説明」の入力欄があるのでそれぞれ適切なものを入力します。
▲ すでにリスト構成には触れましたので、モダンUI上でさくさくと作っていきます。「タイトル」は「Q.質問」へ名称変更します。
あとは、以下の定義通りです。列を増やすのは「A. 回答」と「分類」のみで、あとは既定列を使いまわします。
列名称 | 種類(データ型) |
---|---|
ID | (リスト作成時にできるものを流用) |
Q. 質問 | 一行テキスト(既定のタイトル列を名称変更) |
A. 回答 | 複数行エディタ(画像、表、リンクを入れられるように拡張リッチテキストを使う) |
登録者 | (リスト作成時にできるものを流用) |
登録日時 | (リスト作成時にできるものを流用) |
分類 | 選択肢 |
「ID」「登録者」「登録日時」などは最初は表示されていないので、ビューの編集画面から表示させます。
「現在のビューの編集」より設定画面へ遷移します。
▲ 必要な列を選びます。更新者・更新日時などはおまかせです。
「A. 回答」と「分類」の列を追加します。
リスト一覧画面上から列を追加できます。
- 「A. 回答」は「複数行テキスト」
- 「分類」は「選択肢」
を選びます。
「A. 回答」の「複数行テキスト」は拡張リッチテキストをONにしておきましょう。
これで画像、表、ハイパーリンクなどの挿入が可能になります。単純なテキスト情報のみよりも情報の表現手段が増えるので使いたいところです。
FAQのカテゴリ表示に対応させるために、「分類」列を選択肢として作ります。
同じ分類名称でビューを作るので、分類項目は事前に設計しておきます。
これで必要な列ができました。
一覧画面上から列の並びを変更できるので、認識しやすい順序に並び替えます。
▲ 並び替えが完了しました。なお、「A. 回答」については非表示にしておきました。複数行テキストの列はリストが縦長になりがちなので普段運用する一覧画面上では非表示にしておいたほうがスマートです。
手順2 リストにアイテム(FAQ)を登録していく
▲ FAQ登録用のリストができたのでアイテムを登録していきます。エクセルなどから移行する方は、このタイミングでひとつひとつのFAQの精度を確認しておくとよいでしょう。
右側のコメント欄はこの記事を投稿する少し前に追加された機能です。それぞれのアイテムに対してコメントができるので変更管理や、注意喚起などに使えます。
時短のため、作り置きのFAQを出します(料理番組風)
▲ FAQ一覧が出来上がりました。
手順3 ビューを作る
以下の定義に従い、ひとつずつビューを作ります。
No. | ビュー名称 | 説明 |
---|---|---|
1 | カテゴリA | カテゴリ分類用、質問のみで5つ表示する |
2 | カテゴリB | 同上 |
3 | カテゴリC | 同上 |
4 | カテゴリD | 同上 |
5 | 最新のFAQ | 最新FAQのみを5つ表示する |
6 | すべてのアイテム | リストを作ると既定で作られるリストで主に登録用 |
▲ 初期状態では、「すべてのアイテム」というビューが適用されています。
このビューにフィルターやソートを行い、その結果を別のビュー名称で保存します。
▲ 一覧画面上で「分類」から「フィルター基準」を選んで、「カテゴリA」にフィルターします。
▲ 画面はIDが昇順に並んでいます。必要に応じて、登録日時の新しい・古い順などに変更してもよいと思います。
▲ Webパーツで埋め込むことを考慮して「Q. 質問」と「登録日時」以外は非表示にしてみました。
▲ カテゴリAに絞った後に「ビューに名前をつけて保存」で「カテゴリA」と名前をつけます。
上記のビュー保存作業をカテゴリの数だけ行います。
一旦、「すべてのアイテム」ビューに戻って同じ操作をすると良いでしょう。
▲ 最近作られたFAQを一覧にするには「登録日時」で新しい順にソートしなおしてそれを「最新のFAQ」ビューとして保存します。
ビューが一通りできました。
手順4 閲覧者用ページにリストをWebパーツとして埋め込む
ページを一つ作ってそこにFAQのリストをWebパーツとして入れます。これは見せるビューの数分行っていきます。
▲ ホーム画面から「+新規」→「ページ」で新規ページを作ります(トップページに入れる場合は作成不要です)。
▲ ページ名称をつけます。ここでは「システムに関してのよくある質問」としておきました。
ページの編集方法、Webパーツ埋め込み方法などは以前の記事で触れています。ここではポイントのみに触れていきます。
▲ 上記のようなイメージでFAQを埋め込んでいきます。
▲ 2段組のセクションを2つ、一段組のセクションを1つ作ります。これでリストを埋め込むエリアを5つ確保しました。
▲ 5つのエリアに同じリストを入れ込んでいきます。
▲ リスト名は設定通りのものが表示されています。入れ込むビューごとに名称を変えていきます。その後は、左上の鉛筆✏︎ボタンを押してリストを設定します。
▲ 上記の通り設定します。アイテム数やコマンドバーの表示有無はお好みです。
▲ 一つめのビューが入りました。もう一工夫でボタンを設置します。「すべて表示」と出ているテキストからビューのリンクURLが取得できます。これをコピーします。
▲ ボタンWebパーツを使ってボタンを作ります。
あとは同じ要領で残りのビューを入れれば完成です。
手順5 サイト内に閲覧者・投稿者それぞれのページへの動線を確保する
あとは、閲覧用のページと登録用のページをサイトないのわかりやすい場所にリンクしておけば完成です。
こんなときは?
アクセス数をとって、その順序でリスト表示はできないことは記載しました。
任意のFAQを優先して表示することは可能です。「優先度」を示す列を作りその順序でソートしたものをビューに保存すれば可能です。
Sharepointのリストには、評価機能が存在します。リストのアイテムに「いいね!」や「星評価」を実装します。閲覧者からの反応が得られれば、FAQアイテムを数値評価することが可能です。
あとは、これらを降順で表示するビューを準備すればOKです。リストの評価機能については、以下の記事に投稿しています。
承認状態を示す列を作って承認されたFAQのみを表示した状態でビュー保存すれば可能です。
ワークフロー形式にするには、Power Automateを使う必要があります。
FAQをよく見る側からFAQを作る側に連絡できる手段を準備するべきでしょう。
ありきたりな電話・メール以外では、Microsoft formsの活用、あるいはリスト内にFAQ管理者へ通知するためのボタンをPower Automateで準備しておくなどの手段が考えられます。
Power AutomateでTeamsあたりで通知だしつつ、変更リクエストを別のリストに入れ込んで変更漏れがないように管理してもよいでしょうね。記事かきながらいいアイデアだと思った(やんないけど
まとめ
SharepointでのFAQサイトの作り方を投稿しました。
凝ったことをしようとしなければ、さほど難しくありません。質問と回答がわかればいいだけですしね。その割にエクセル管理に比べれば、コンテンツの可読性は格段に上がります。